鯨統一郎「邪馬台国はどこですか?」(創元推理文庫)*9

連作短編歴史ミステリ6編。邪馬台国聖徳太子明治維新など小学生でもよく知っている歴史と文献をネタに「邪馬台国は東北にあった」などの新説を展開していく。全編がバーのカウンターで交わされた歴史談義として描かれていて読みやすい。奇説を傍証と理屈で固めていくプロセスはかなりエキサイティングだし、各話に気の利いたオチが付いていて単純に物語としても楽しめる*1。惜しむらくは、論戦の敵役が才媛という設定に反して箸にも棒にもかからないヒステリック姉さんになってしまっていること*2

*1:主観的な白眉は第3話「聖徳太子はだれですか?」。日本書紀とか好きなので。表題作も爽快だったけれど、論理展開の最初の一歩がちょっと不足かな、と。

*2:ただ、彼女があくまで一般常識を固持しているおかげで、論理が飛躍しすぎずに済んでいるようなところもある。もしも彼女の物分りが良かったら、きっと読者は置いてけぼりだろう。