ロバート・F・ヤング「たんぽぽ娘」

時間ロマンスで思い出した。ヤングの「たんぽぽ娘」に:

Day before yesterday I saw a rabbit, and yesterday a deer, and today, you.

という多分界隈では有名な一節があって、邦訳では:

おとといは兎を見たの。昨日は鹿。今日は、あなた。

みたいになっており、紳士であれば「today」と「you」の間のカンマ、「今日は」と「あなた」の間の読点が非常に重要なポイントであることがすぐに分かると思うのだけど(言うまでもなく、この「、」の間に「少女」が「彼」の方へ振り向き、タンポポ色の髪がふわりと膨らんだに違いないのである!)、それはともかくとして、なぜ日本語にすると「〜たの。」「〜あなた」のようなヘンな口調になってしまうのか、ということがずっと気になっていたのだ。翻訳調のお約束と言ってしまえばそれまでだけれど(ハリウッド映画の吹き替えはいつだってこんな感じだ)、普通に考えて、今日びこんな喋り方をする女の子はまずいない。このシーンの時点で主人公は少女のことを「頭の可哀想な娘」と認識しているので、このヘンな口調はその認識の反映だろうと最初は自然に読み流してしまっていたのだけれど、良く考えると当該シーンで実際のところ少女はまったく聡明なわけで、その彼女が妙な話し方をする道理はないのである。でも、

一昨日はウサギを見たんだ。昨日はシカ。今日は、キミ。

これなんか完全に私の趣味の妄想だし、白い古風なドレスを着たタンポポ髪の女の子なんて現実には存在しないので、口調なんて少々浮世離れしているくらいで丁度良いんだと思って非常に納得した。