宮部みゆき「火車」(新潮文庫)*6

ミステリ長編。実は今回が宮部作品とのファーストコンタクト*1。一読して、雰囲気作りの上手い作家だったんだなー、と唸った。謎解き成分はちょっと物足りなくて探偵役の鈍感さにイライラするし、社会派成分は「借金地獄は普通の人々の問題なのだ」と警鐘を鳴らす内容の割に登場人物たちが明らかに「普通でない」生い立ちを持っていて安直なのだけれど。細かなシチュエーションや描写、台詞に魅力があるおかげで不思議と先へ読み進めたくなってしまう。軽快な小説*2

*1:ベストセラーを敬遠する傾向があるので……取っ掛かりの一冊としてこれが適切だったかどうかは、そのうち分かるでしょう。

*2:選挙カーの喧しい昼休みに最適な作家を発見した気分。加納朋子もイーガンも選挙カーの醸し出す空気には溶け込めないので……ちなみに、前者は雨がちな日曜日の昼下がりに紅茶を舐めたり猫を撫でたりシチューを煮込んだりしながら、後者は新幹線や飛行機の中でエコノミークラス症候群と戦いながら一気読みするのに最適だと思っている。