グレッグ・イーガン「万物理論」(創元SF文庫)*8

長編SF。訳者あとがきに長篇数冊分のアイデアとある通り、序盤から大小のネタ*1が満載の展開。ストーリーを見失いそうになりながらも辛うじて読み進めると、中盤、宇宙消失でも味わったトンデモが炸裂する。以降、理論方面に関しては素直な形而上学を逸脱しないので地味といえば地味なのだけれど*2、政治的な駆け引きやらアクションやらも登場してきて最後まで目が離せない。宇宙消失のネタになった量子論と比較してTOE万物理論には架空の要素が多く、前提知識が不要なのも長所。問題があるとすれば、600ページもあって重いというあたりか。山岸真訳。

*1:7種のジェンダーとか、未来的なジャーナリズムのシステムとか。

*2:トンデモの方向性としては幼年期の終りと若干重なるものの、あちらがものすごく不快だったのに対してこちらは極めて気分爽快だった。