初夢2007

まんが日本昔ばなし風の絵柄と常田富士男の語りで。
入り江の村のはずれに仙人が住んでおった。がけっぷちに葦の庵を構えて住んでおった。仙人は、小魚と野草を食べて暮らしておった。

吉六どんはそこつ者じゃった。吉六どんは村人どもの笑い者じゃったが、人気者でもあった。吉六どんも村の者たちが大好きじゃった。
ある日のことじゃ。村人どもと漁に出た沖合いで、吉六どんははぐれてしもうた。吉六どんの舟は流された。どんどん、どんどん、流された。ちょうど網に大物がかかったおり、村人どもは吉六どんの悲鳴に気付かなんだ。
その夜、村がしんしんと寝静まったころ。村を流れる川が溢れてしもうた。家という家、人という人は流された。どんどん、どんどん、流された。知らぬ間に、山のほうで嵐が暴れ狂っていたんじゃ。
仙人は「海へ逃げろぅ、舟で逃げろぅ」と呼びかけた。じゃが、村人どもはさんざん流されつくした後じゃった。仙人は、あきらめて一人で海へ逃げることにした。崖の上から縄ばしごを下ろして、そろりそろりと降りていった。
じゃが、仙人はつるりと足をすべらせて、まっさかさまに落っこちてしもうた。くるくるくると落っこちてしもうた。

吉六どんはほうほうのていで岬に流れ着いた。すると、目の前に縄ばしごがぶらさがっておる。「神さんのお助けじゃ」縄ばしごをひっつかんだ吉六どんは、喜び勇んで村へ舞い戻った。
吉六どんの見たものは、すっかり平たくなってしもうた村じゃった。吉六どんは村のまん中にある洞穴の見世物小屋に入ってみた。陸の生き物はみぃんな溺れ死んでしもうた。残っているのは、水の生き物だけじゃった。青硝子の水槽の中で、亀が悠々と泳いでおった。
※ここで目が覚める。

さて、今年の運勢は……吉でしょうか、凶でしょうか。

注釈

  • 崖……2時間ドラマのラスト10分で追い詰められた犯人が自供するためにしばしば利用されるような崖然とした絶壁だった。
  • 仙人……ちょっと可愛い感じの仙人。子泣き爺のような外見で、特に道力などは持っていない印象。仙人と呼ばれているだけの、単なる偏屈な人間かも。
  • 吉六……名前の記憶はやや朧げ。「〜六」なのは間違いないと思う。「助六」ではない。
  • 見世物小屋……ビジュアル的には見世物小屋なのだけれど、夢の中では「水族館」と呼ばれていたような気もする。陸の獣が主体なのに水族館はないだろう>夢。犬、狐、獏、蛇、ネズミ、ウォンバット、パンダなどが「入っていたはず」の空っぽのケージと、亀、ゲンゴロウ、ウナギ、ペンギン、イルカなどの無傷の水槽が順不同で2段に積まれていた。