バトこん感想(1)

一作だけ。見出しは(1)としましたが、続くかどうか分かりません。

No.5 Fly me to the moon(ネタバレ少し)

最初に言い訳をさせていただくと。KanonのSSなら、たとえ美汐さんが酷い目に遭っていようともおよそ公平な視点で作品を評価することができるのだ。でも、MOON.はダメだ。葉子さんがこんなことになってしまうとそれだけで点数が偏ってしまう。具体的には-5点くらいの補正である。なぜなら、私の中でのヒロインランキングは 雑多なヒロイン<詩子<裏葉<美汐<<<<(超えられない壁)<<<<葉子 だからだ。全体、私は不適切な読者なのである。あんまりショックなので、感想の文体も普段とは180°変わってしまった。
深呼吸でそこを耐えて読み進めると、作品を満たす身も蓋もない不条理感に気付く。この感覚は、実際のところ原作に似ている。設定やストーリーのうえでは割と原作から飛び出しているように思える一方で読んだあと原作に通じる印象が残るというのは、私的基準では大変素敵なSSにカテゴライズされる。「SS」を離れて純粋に掌編物語として考えても、このラストにこのタイトルを当てるセンスはまったく凄いと思う(あるいは前例があるのかもしれないけれど)。最後に来て壮絶なビジュアルが浮かんだ。これは夢に出る。
しかししかし。これはバトルか? と思うのだ。アクションを増やせと言いたい訳じゃない。喧嘩・戦闘以外もバトルだと企画概要にも明記してある。私がこれをバトルだと認められないのは、いかにも両者の実力が拮抗していないからだ。我ながら了見が狭いとは思うけれど、戦いが「物語」になるためには戦力伯仲のドキドキ感が最低要件だと信じている。フリーザヤムチャではバトルにならない。相手が悟空だからこそのバトルなのだ。本作では、郁未VS世界、郁未VS葉子、郁未VS少年そして郁未VS郁未、どの角度から切っても緊迫感がなかった。物語の背後に「描かれていないバトル」を感じるか、という視点で読んでも疑問が残る。これは単なる終末モノだ、と私は感じた。