Two men look out through the same bars: One sees the mud and one the stars.――Frederick Langbridge

二人の男が同じ牢の中から外を見た――ひとりは泥を、ひとりは星を。某コミック第1巻扉の引用で有名な詩だけれど、さて、これをどのように解釈できるだろうか。検索してみると「全く同じ境遇が本人次第で良くも悪くもなる」「どんなときでも希望を持て」という解釈しか出てこない。「泥」は悲観の象徴であり「星」は楽観の象徴であるというのだ。これはつまり、フレデリック・ラングブリッジにはそういう主義や背景があって、私はそれを知らないということなのだろうか。
単純に文面だけを捉えた私にしてみれば、冒頭の詩は色々に解釈できるものの上記の意味になる可能性は低い:

  • 教訓として解釈するなら、「泥」と「星」はそれぞれ現実と逃避の象徴である。つまり、星を見上げた囚人は人生を諦め「こんな自分でも綺麗な天国へ行けるのだろうか」などと夢想して自らを慰めているのであり、泥を見詰めた囚人は罪を清算して(あるいは身の潔白を明らかにして)再び土の上に立とうと決意を固めているのだ。無論、諭されるべきは星の男である――彼が明白な死罪人でないならば。
  • 皮肉として解釈するなら、「泥」と「星」はいずれも「瑣末な事柄」の象徴である。囚人たちが眺めたところで無闇に悲観や楽観の心を刺激するだけであり、露ほどにも建設的でない。彼らはもっと別のことに目を向けるべきなのだけれど、過酷な境遇はそのように前向きな意志を容易に奪い去ってしまう。

また、こういう解釈もできる――世の中には色々なモノの見方があるけれど、ひとりでは視点が偏ってしまう。泥の男は、星の男に泥の存在を教えることができる。星の男は、泥の男に星の見方を教えることができる。人間にはそれぞれ役割というものがあり、全ては社会を構成する不可欠なピースなのだ。
……と、こんなことばかり考えていたので中高生の頃の国語の成績はアレでした。サイトに「大学入試センター試験対策室:現代文」とかいうコンテンツを置いているのはネタですので。