加納朋子「ささらさや」(幻冬舎文庫)*5

短編連作ミステリ8編。頼りない妻である主人公のピンチに、亡き夫が他人の身体を借りて助けに――というファンタジック*1な設定と、加納作品ならではの優しい謎解きとが絶妙に融合した素敵小説。
――なのだけれど。この作品のポイントは、幼げな容姿の未亡人でも、タイムリミットに達して現世から去っていくウルトラマンみたいな夫の霊でもない。婆三人衆。マクベス三魔女もびっくりの、婆三匹。世慣れぬ主人公の師匠であり、縁者のない彼女の母親でもある――あろうことか、そんな婆が三人もいるのだ。私の知り得る限り、これは史上最強の婆小説である。