ふゆのはなし
木枯らしの駅前。 待ち合わせの時間までは、あと5分。 凍えた両手を口の前に持ち上げて、はぁっと息を吐きかける。 わたしのその手を包み込んだ、大きな手。 ありがとうを伝えるために視線を上げると、 あなたは少し困ったような、決まり悪そうな顔をしていて。 だから、わたしは言葉の代わりに――
ぼくは自分のダメさ加減にほとほと嫌気が差していた。 情けないったらない。 寒さに赤くなった手を温めてあげようなんて格好つけておきながら、 低血圧のぼくの手は、きみの手よりもずっと冷たかったんだ。 こちらを見上げたきみは少し不審そうな、呆れたような顔をしていたけれど、 いちど手を握ってしまった手前、あっさり放すこともできなくて。 言い訳を考えていると、きみは俯いて、ぼくの手に唇を近付け――
「!」 寒さとは別の理由で真っ赤になった少年の手を見て、少女は笑った。 「ほら、あったかくなった……ね?」