BOKE NOTE(ボケノート)*4­*5

竹仙人さんの日記*1より。何やらジャンプの巻末読者コーナーみたいで楽しげなので、9.11のお題 [Page127] 無人島に流れ着いて最初にすること。を眺めてみたところ、232作品中3つの作品に笑いの中枢を刺激された。1位の全身に付いてる――、10位の遠くに見える朽ちた――、146位のと金――、の3つ*2
後から分析してみると、笑えるネタというのは:

  1. 言葉の贅肉がない。しかし、あるべき言葉は揃っている。
  2. 理解のためのコンテキストに共感できる。しかし、ネタそのものはそのコンテキストを踏み台に飛躍する。

1と2は表裏一体で、送り手と受け手の前提知識が重なれば重なるほど、最小限の言葉から無意識の理解が先へ先へと進むようになる。その一瞬のプロセスが自分にとって意表を突くものであれば、笑える。内輪ネタが面白いのは、必然的に文脈が共有されているから。共有できなければ、飛躍云々以前に台を踏み外してしまう。その意味で、9.11の回は1位の作品だけが別格だという印象。日本人のほとんどが「ダメっぽいこと」として共有しているコンテキストの上に、完全に枝葉を刈り取った言葉を乗せている。この土台を選んだ時点で8割方勝ったようなものだけれど、そのうえ表現が端的だから受け手によって異なる好みや美学の影響も受けない。一方、おたくネタ(10位)やナンセンス(146位)で私が笑えたのは、単なる確率の問題。私は幸運にもそれらを受容するための素地を持っていて、なおかつ飛躍の方向性が私の感性に合っていた。面白くないと感じる人も大勢いるんじゃないかと思う。
逆に、笑えないネタは上の1、2を満たしていないという訳で:

  1. そもそも前提の段階でさっぱり分からない。
  2. 分かりすぎる。常識を逸脱しないので新鮮味がない。
  3. テーマの魅力を頭では理解できるのだけれど、表現方法がちょっと……「余計なこと書くなよぅ」「私ならこうするのに」という思考が脳裏を過ぎった時点で萎えてしまう。

全体としては3のパターンが多い印象。ただ、そうして色々な書き方ができる時点でそのテーマは万人向けじゃないのかもしれない。ちなみに、2位〜9位の作品で私が笑えなかった理由はそれぞれ11233213。1と2なら「相性が良くないことだってあるさ、人間だもの」と流せるものの、3の場合はひたすらもどかしい。
――と、ここまで書いて我に返った。たった1行のネタに対して、いったい30行も何を語ることがあるってんだ? つまらないことを書いていないで1行で勝負しろ、と私の右肩に座った天使が呆れた。無理、と左肩の天使が即答した。それもそうだな、と右肩が同意すると頭上に悪魔が現れて、こいつはギャグセンスのギの字もないからな、と揶揄した。いじめないでくれ悪魔め、と両肩が口を揃えたそばから、左肩が造反した――だけど、ギャグ以外のセンスもないよね。右肩は溜め息を吐いて、ちっとも我に返ってないぞ、これ――私はそこで踵を返し、一人会議室の扉をそっと閉じた。違う、これは涙なんかじゃない。

*1:id:takesennin:20050912:p2

*2:コンテキストが変わるとネタの価値も変わってしまうと思うので、全文引用は控えます。