グレッグ・イーガン「宇宙消失」(創元SF文庫)*10

SF長編。2034年空から星が消えた――壮大なスケールの舞台設定ながら、ストーリーは二流SFっぽいサイバーでハードボイルドな誘拐事件の捜査シーンから始まる。そこから、量子論観測問題のトンデモへ、そして宇宙と歴史のあり様を根底から揺るがす途方もない真相へ――と飛躍に次ぐ飛躍。その展開にすっかり取り込まれて、一気に読んでしまった。設定やストーリーの魅力も去ることながら、主人公が量子論で形而上な葛藤をみせる中盤が出色。専門用語頻出ながら、翻訳の文体は読みやすい*1山岸真訳。

*1:ただ、過訳っぽい箇所は少々。量子論分野外で妙な語法があったような気もするけれど、メモしてなかったので忘れた。