どうしても眠ってしまう

私は、昔から授業、講義、講演、会議、祝辞、説教、セミナー、シンポジウム、カンファレンスなどの最中に寝てしまう性質である。それはもう100%に近い確率で寝る。野比のび太に迫る勢いで寝る。
話の内容がつまらないから寝るわけじゃない。先生の歴史再現独り芝居が魅力的だった世界史の授業でも、非常に興味のあるテーマだったのでわざわざ予定を空けて出席して興奮しながら聴き始めた対談イベントでも、記憶があるのは最初の10分だけ。むしろ、話が面白ければ面白いほどスムーズに寝てしまう。
寝不足だから寝るわけじゃない。前の夜にたっぷり睡眠をとっていても関係がない。寝すぎも良くないと聞いたので6時間、7時間、8時間のように色々と試してみたけれど、全部寝た。
メモを取りながら話を聴けば眠くならないと聞いたので試してみたこともあるけれど、3分で寝た。ブラックコーヒーを3杯飲んでも効果なし。太腿に鉛筆を突き刺しても効果なし。目覚めるツボは少し効いたものの、15分で寝た。
体調が悪いとか過眠症だとかで身体的、精神的に睡眠を必要としているわけでもない。普通の仕事では眠くならないのだ。むしろ2〜3日なら眠らずぶっ通しで作業できるくらいだ。知的労働(デザインや執筆など)でも単純労働(刺身の上にたんぽぽを乗せる仕事など)でもOKである。こういう場合はアルコールを飲んでも眠くならない。
受身の刺激だからダメなのかというと、映画ではあまり眠くならない。コンサートでは眠くなることを考えれば、おそらく想像、空想、妄想の類を喚起されることで意識が漂流してしまうんだろう。以前も話題にしたように私の思考は映像ベースなので映画には想像の余地が少ないのだ。
面白いトークで寝てしまう理由もこれなら説明できる。魅力的な話は色々な思考のきっかけになる。いったん思考が始まってしまうと、思考→想像→夢想→睡眠の遷移はノンストップだ。言い訳をさせてもらえるなら、映像ベースの思考回路のせいで思考の世界と夢の世界の境界が曖昧なのである。トリップしやすいのである。
不思議なのは、話が終わる数分〜数秒前に必ず目が覚めること。予定時間をオーバーしたり逆に早く切り上げたりする場合にもたいてい実際の終了間際に起きるし、スケジュールにない途中休憩が入る場合には休憩の直前で覚醒する。ちゃんと話を聴いている別人格がいて、そいつがほどよいタイミングで私を起こしてくれているとしか思えない。そんな別人格がいるなら眠る前に起こしてくれれば良いものを……あと、電車でも降りる駅を乗り過ごす前に起こしてくれれば良いのになぁ、と思いました。