私は空気を読まない(ただ文字だけを読む)*4

ラノベは良くないよ。特に最近のは良くない。粗製濫造の中になまじ質が高い作品もあったりするから抜け出せなくなる。ロードスやスレイヤーズの頃のラノベには、明らかに「卒業」のタイミングがあったんだ。中学卒業とか高校卒業とか、そういう節目で「もうラノベって年じゃないよなぁ」っていう心理イベントが確かにあった。ラノベ読者の中にはおたくっぽい奴もそうでない奴も同じくらいいたけれど、みんないつの間にか卒業してた。
なのに、近頃は出版する側もメディア展開が主体で、いわゆるおたく市場にフォーカスしてる。対象年齢をティーンに限ってない。おたくの純粋培養だ。ラノベを読むのはおたくだけ。おたくがラノベを読むんじゃない、ラノベを読む中高生がおたくになるんだ。それだけじゃない。作品自体によるおたく文化の消費。ジャンルの内側で完結する閉じたおたくサイクル。これはいわば、おたくの永久機関だ。ところで、笹本祐一は面白いよねぇ……小娘オーバードライブ (角川文庫―スニーカー文庫)。シリーズ全4巻。
もちろん、その辺りの状況をすっかり把握した大人が「最近のラノベは侮れないなぁ」と楽しむのは何も問題ない。実際に侮れない作品はいくつかある。ただ、ドリトル先生さえ読んでない中学生が国語の教科書以外で初めて出会う文章創作がラノベだとしたら問題だ。外観がなまじ小説に似てるから、それは詐欺になる。勘違いのスパイラルから抜け出せなくなる。骨の髄までラノベに中毒するか「純文学は文化でラノベはゴミ」のような反動に取り付かれるかのどちらかで、やがて読書の愉しみを失う。
ラノベラノベであって「イラストの付いた小説」じゃない。読書感想文の宿題で「マンガやラノベを題材にしてはいけません」というのは正しい。ラノベは確かに良質のエンターテインメントたり得るけれど、ラノベと小説を区別できないお子様は読んではいけない。特に、「ラノベと小説を区別」というフレーズに対して「グレーゾーンな作品もあるよね」が反論になると本気で信じてしまうようなお子様はダメだ。
じゃ、何を読めば良いかって? そんなことは国語の先生に訊きなさい。まあ、私の恩師はぼのぼの (1) (竹書房文庫)を薦めてた、とだけ付け足しておく。ではさらばだ!