仁木英之「僕僕先生」(新潮社)*7

ファンタジー長編。日本ファンタジーノベル大賞受賞作にして、ゆるゆる系中華ファンタジーの快作。全体、私は中華ファンタジーが好きなのだ*1。中高生向けなのか、易しい文体で読みやすく書いてある一方、それっぽい四字熟語で軽く中華スパイスを効かせていたりするから心憎い。文章も世界も人物も人外も、決して本格派ではないけれど安っぽくもない、心地好いバランス。特に、序盤から中盤にかけて物語がどんどん広がっていく感覚が出色で、最後まで一気に読んでしまった。頭の中に浮かんでくるビジュアルやサウンド、味や臭いも鮮やかで、否が応にもコミック化やアニメ化を期待してしまう*2
ところで、これ、挿絵も良いです。すっかり本文にマッチした、とぼけた感じの雰囲気。あと、表紙の質感も……ハードカバーが苦手なので。

*1:則天武后の名前を聞いても「あ、いたいた、そんな人」程度の感覚しか持てないくらい中国史に疎いくせに、崑崙という固有名詞を耳にした途端にワクワクしてしまう……

*2:私の記憶が確かなら、日本ファンタジーノベル大賞は当初「受賞作がアニメ化される」企画だったはず。NTVで「後宮小説」と「楽園」のアニメを観た記憶がある。「僕僕先生」は舞台や視点の転換と摩訶不思議なアクション、ついでにキュートな女の子、もどかしいサービスシーンの宝庫なので、凄くアニメーション向きだと思うなぁ……付け加えれば、縦横無尽(?)に「飛び」まくるこの作品は宮崎駿向きだと思う。