石持浅海「月の扉」(光文社文庫)*1

ミステリ長編。主人公たちがハイジャック事件を起こしている最中の機内で、ハイジャックとは関係のない謎の殺人事件が起きてしまう――というエキサイティングな筋書き。「本格」の定義は良く分からないけれど、機体=閉鎖空間、機内のトイレ(殺人現場)=密室、たまたま居合わせた乗客の青年=探偵という配役で、これは本格推理なのだろうなーと思う。そう思って読めば、登場人物の薄さ*1や場面の不自然さ*2も飲み込めます。ラストも評価の分かれるところだと思うけれど、「語り尽くした」という潔さが感じられて私は好きです*3。座間味くんラブ。

*1:意図的なのか、主要人物が凄く記号的。付け加えると、前に読んだセリヌンティウスの舟の人物と同じ顔ぶれに感じられる。

*2:緊迫しているはずの状況で長々と謎解き演説をしている、とか。

*3:超能力的なカリスマを持つ「師匠」が関わってくることで物語には少なからずファンタジックな要素が含まれているのだけれど、犯行と謎解き自体は極めて現実的に行なわれるので非常にフェアな作品かな、と。