ボクに怒りを教えて

aboutページ喜怒哀楽のうち怒と哀の機能がないとあるのは割とネタのようでいて実はネタじゃないのだけれど、最近、「哀」が少しずつ分かってきたような気がする。この感情が最もストレートに出てくるシチュエーションは――恋人にフラれたとか、身内が亡くなったとか、録画予約がズレたとか、そういう端的な場面よりも――例えば「我が子が手の付けられない不良になってしまった」母親の気持ちとか、そっち方面なんじゃないかな。
残りの懸案は「怒」――これは本当に難しい。「哀」の理解が進むと同時に、これまで「怒」の一種だろうと解釈していた感情がむしろ「哀」に近いということに気付いたりして、目下「怒」に関しては白紙の状態。主観としては「『怒』なんて本当にあるの?」なのだけれど、周囲を見回せば非常に立腹していると思しき人物の姿が各所に見受けられるので、恐らく「怒」は実在するのだろう。
「怒」なんて知らない方が幸せだと開き直ってしまえれば楽なのだけれど、普通に会話していて感情を共有できないというのは思いのほか具合が悪い。幸い「喜」と「楽」は素直に共感できるので、話題を可能な限り明るい方向へ持っていくように画策したり、しなかったり。ちょっと不自然だ。
書き物についても、当然、分からない感情は描けない。だから、SSにしろオリジナルにしろ、拙作の登場人物は恐らくこれまで本当の意味では一度も「怒」っていない。物語としての底が浅いのはこれだけが原因じゃないけれど、少なくともこの点をクリアしなければ深みのある物語は生み出せないんじゃないかと思う。現状では、どんなに頑張っても記号としての「怒」しか書けないのだ。それとも、自分が気付いていないだけで実は「怒」を表現できていたりするのだろうか。もしそうだったら嬉しい。