テッド・チャン「あなたの人生の物語」(ハヤカワ文庫SF)*9

短〜中編SF8編。未来系のストーリーとファンタジー系のストーリーが半分ずつ。8編それぞれに独特の空気があって印象深いのだけれど、やはり表題作が凄まじい。異星人とのファーストコンタクトもの――と単純にカテゴライズできない存在感。同じ世界に存在しながら、それらと人類とは文字の本質も数学の体系も違う。時空を認識する方法そのものが違う。作品自体さえもそのように構成されていて、とにかく圧倒的*1。巻末の解説にイデアとスタイルと物語のたぐいまれな結合が生んだ傑作とある通りの感動作*2浅倉久志訳。

*1:私は起承転結と爽快なオチを特に好む読者だけれど、ここまでやってくれれば何も文句はない。

*2:「感動作」は語弊があるかもしれない。揺さぶられるのは感性ではなく、理性。あるいは自我そのもの。