キャロルに関する誤解

数学者な牧師であり、何より「アリス」の作者であるという時点で、キャロルはそもそも通俗的な解釈の及ぶ対象じゃない。伝統的な意味でも現代的な意味でも、ある種の「神」なのだ。とはいえ、だからこそ「創作」のモチーフとしてキャロルは極めて魅力的な題材となり得る。「リンゴが木から落ちる――」や「桜の枝を折ったのは――」の例を引くまでもなく伝記が史実であるとは限らないのだし、著者がロリコンだったという言述は「アリス」の価値をいささかも貶めるものではない。
――などと考えながらこれまで生きてきましたが、実際に伝記や風説を斬り伏せる記事を目の当たりにすると少しばかり感無量ですね。「少し無量」というのも矛盾した表現ですが。