ジェフ・ヌーン「未来少女アリス」(ハヤカワ文庫FT)*1

ファンタジー長編。不思議の国のアリス』完結篇(?)(裏表紙より)と謳っているからには読まざるを得ない――が、少々肩透かし気味。作中に散りばめられたパロディや駄洒落の数々は確かに面白いけれど、話の展開がいちいち理に適いすぎていて、「不思議の国」の予測不能な魅力や「鏡の国」のナンセンス・ロジックを期待していると残念なことに。不条理な謎が次々とグロテスクな真相を曝け出していく描写は、とにかく無粋*1。ドジソンの使い方も無粋だけれど、これについては作者が巻末で謝罪しているので……エリプシス。風間賢二訳。

*1:あからさまにグロテスクなキャラクターたちよりも、むしろアリスらしくない思考そのものが気持ち悪い。とはいえ、ヌーンは元々こういう作風らしいので仕方ないのかなー。