Music Sales in the Age of File Sharing

インターネット利用がCD売上に与える影響はプラス〜米大学生の卒論公開というセンセーショナルな見出しで紹介されていた論文。要旨は「ファイル共有とCD購買との間には若年層で負の相関、成年層で正の相関があり、総合すると正の相関」で、音楽業界の主張と真っ向から対立している。インターネット(ファイル共有)やCD購買に関わる種々の要因を丁寧に調査しており、卒業論文としては上出来の部類に入ると思う。
ただ――恐らく「始めに結論ありき」で書き上げてしまったのだろう――重要な論拠となっている推測「インターネットがCD購買と関係する主な因子はファイル共有」の根拠が示されていないため*1、論理が破綻してしまっている。それを考慮して冒頭の記事は「ファイル共有」ではなく「インターネット」を見出しに掲げているのだろうけれど、案の定というか、結論だけが一人歩きしてしまっている現状は……音楽業界とP2Pコミュニティが分かり合うまでの道のりは、まだまだ遠い。

*1:それだけでなく、論文の中盤には「成年層の多くは音楽ファイルをダウンロード(共有)しない」という(上記の推測と)相反する調査結果が引用されている。