加納朋子「螺旋階段のアリス」(文春文庫)*4

連作短編ミステリ7編。脱サラ探偵と押し掛け美少女助手。キャロルの不思議の国/鏡の国のキャラクターをモチーフに――との触れ込みに惹かれつつ読んだものの、所々に登場するアリスネタには若干の唐突感を覚えてしまう。とはいえ、この作者らしく悪人不在の優しいストーリーと巧妙な構成は健在。序盤は本職の探偵がワトソン役に落ち着いてしまっていて情けないけれど、終盤の彼は割と男前で良い――探偵は極力寡黙であるべきだ。ひらひらの美少女を相手に、ふかふかの猫について談笑するなどもってのほか。そうじゃないか?